横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校同窓会

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附属横浜中学校について思うこと

附属横浜中学校について思うこと

治田 成夫

附属横浜中学校を定年で退職して、もう十五年近くになる。大学の研究室から直接赴任して退職するまでの三十年が、学校にとって、また私にとって何だったのか、今でも心の奥底では、解決できないように思われる。

今でも学校のことを夢に見る。多いときは週にニ、三度という頻度で。場面は様々だが、挫折感や焦燥感を味わっていることが多い。教壇に立ったら教科書を忘れていたとか、机間を歩きながら話しているのに声が生徒に届かないとか、授業が何時間もあることを急に告げられて準備ができていないとか、朝起きたらもう授業に間に合わない時間だったとか。

学校の思い出を問われて、いろいろのことを振り返ってみても、今ならあんなことはしないのにという、後悔ばかりが山のようにある。その思いが夢に出るのかもしれない。

在職中における自分の言動が、今でも自分に受け入れられず、それが何時までもわだかまっていて、あの三十年間の意味を解答しづらくしているのかもしれない。

附属横浜中学校は、教育の理想を追求できるところで、生徒、職員、父母の関係がよく、不思議な魅力と強い教育力を備えた、学校臭くない学校で、私にはありがたい職場だった。

そこに長く在職している間に、私自身が教育してもらい、少しずつ成長できたと思っている。受けた恩恵にくらべて失敗ばかり多くて貢献が少なかった。そういう負い目を感じたまま退職してきた。その思いが何時までも後をひいているように思う。

私が学校を離れて十五年近く経った現在、教育をめぐる世間や行政の姿勢は、何か本筋のものでないような気がする。附属横浜中学校のような学校は、存続し難くなっているのではないかと憂慮している。私のようなものを受け入れて、成長させてくれた、ああいう学校の在り方が、何時までも続いていけるように願っている。



治田先生が2005年末にお出しになった本です。もし本屋等で見かけましたら、ぜひ手にお取りください。
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