中西 今回校長として中学に戻られて、あの当時自分が学生のときは分からなかったけれど、「附属中の先生はこういう所が優れているなぁ」というのを感じるということはございませんか？
高木 それは、すごくあるんですよ。私は一番最初、大学を出て勤めたのが東京の公立の中学で、やっぱりそこでの事と、附属で自分の体験した中学時代と、それと今中学校の先生方とこうしてご一緒させて頂いていて、やっぱり附属の良さっていうのかな、それをずいぶん感じているんですよ。それは、先生たちが、生徒たちにものを考えさせるような仕組みを作って下さっている。頭からあれやりなさいとか、これやりなさいとか、決め付けていない。それは、中西さんの時もそうだったと思うんですけれど。
中西 それは昔からの伝統であるみたいですね。
高木 そうですね。だから、自分たちが考えて自分たちがやって良いという所があったんですよね。その伝統は今でも続いているし、非常に自主的で主体的に今の附属の生徒も動いている。だから、教師との信頼関係もありました。
中西 いろんな先生方にインタビューをさせていただいて分かったんですけれど、いつも「背伸びをする教育」をして来た、と。いきなりもう遥か上の、大学でしかやらないようなことをぶつけたりして、生徒を驚かせる。それで生徒はもっと向学心を持って、教科書に書いてあること以外の、もっともっと上のレベルのものを目指していく。先生方が背伸びをさせる形の教育をしていたというんですね。私も、一年のときに、英語の小丸先生には驚かされました。当時の教科書はJACK&BETTYで、 ”This is a pen.” から始まっていましたね。普通は ”This is a pen.” が英語の一番初めの言葉なんですが、なんと小丸先生は中学一年のとき初めの一週間、教科書は使わなかったんですね。まず挨拶から覚えさせられました。”How are you?” ”I’m fine, thank you. And you? ” と。これを毎日、二人立たせて、会話させるんですよね。
高木 （当時では）新しいですね。今の教育ですね。
中西 会話として発することによって、喋る度胸をつけさせるということを、小丸先生は念頭にあったんでしょうね。他に先生方で思い出に残ったようなことはありますか？
高木 そうですね、それぞれの先生がみなさん個性があって。寺田先生の数学は本当に考えさせる授業でしたし、技術の授業で作った本箱は未だに使っていますし、井田倉先生はカエルの解剖をしてくれましたし。
中西 カエルの解剖はみなさんすごく思い出があるみたいで(笑)
高木 カエル捕りに行きましたね。それから白井先生の体操は、白井先生は国体に出られたバスケットの先生なんですよ。
中西 あぁ、そうだったんですか？
高木 えぇ、授業のときも見本を披露されてね、「え？こんなのが出来ないの？」とそれをヒョイとされるのが印象に残っていましたね。
中西 鉄棒すごかったですよね。大車輪とかしていましたね。
高木 そうです、そうです。それから雲井先生は音楽を･･･。
井田倉先生による理科の授業の様子
中西 退官されても、今でもそういう40年前の先生方に一同に会うことができるって、やっぱり素晴らしいことですよね。
高木 そうですね
中西 同窓会を通じて、先生方が集まっていただける。今おっしゃられた殆どの先生に、最近お会いしています。同窓会も頑張って、今後も恩師の方たちに集まれるような場所を提供していければと思います。少人数ということもあって、先生が名前を全員覚えてらっしゃるんですよね。それが学校にとっては財産であり、なかなかそういった国公立は少ないと思います。
高木 今でこそ附属も3クラスになりましたけれども、当時は2クラスですからね。
中西 卒業して10年、20年、30年と年を経るに従って、この学校の良さというのが分かってくるんじゃないかなぁと思うんですね。在学生の時にはこれが普通と思っていたことが、社会に出てから色々な話を聞いたり、自分の子供が他の学校に行ったりしていると、良い意味で、いやぁ附属ってすごく違うところだなぁと思いますね。
高木 そうですね、家族的ですね。それはありますね、本当に。